人はみな泣きながら生まれてくる
さてもう一度、日本人の平均寿命の話に戻ってみましょう。
下には先日アップした表を再度掲載しました。
これを見ていただくとお分かりいただけると思いますが、
江戸、明治、大正と時代が移ると、
平均寿命は20代、30代、40代と緩やかに着実に延びてきますが、
50歳を超えるたのは第2次世界大戦の2年後の1947年昭和22年のことです。
その後1950年女性が初めて60越えしますが、
この時点での平均寿命はまだ「先進国中最下位」でした。
それが、1951年男が初めて60越えし、
1952年女性が65越え、
1959年男が65越え、
1960年女性が70越え、
1971年男が70越え、女性が75越え、
1984年女が80越えします。
そして翌1985年、昭和60年、ついに女性が世界一になり、
以来女性は連続世界一、男性もアイスランドに次いで世界第2位ということになりました。
このようにわずか60年の間に、男性は29歳近く、女性に至っては32歳近く平均寿命が延びています。
縄文時代から戦前まで、1万年以上かけて徐々に伸びてきた平均寿命と同じ程度の伸びが
ここ60年で起こっていることになり、最近の平均寿命の延びがいかに急激かということに改めて驚かされます。
先日、歯の寿命はほぼ50歳で、その後確実に歯が失われていくという話をしましたが、
私たち歯医者が体の寿命の伸びのスピードに何とか追いつこう、
歯の寿命を少しでも伸ばして一生自分の歯で噛んでいただこうと、
日々悪戦苦闘しているのもご理解いただけるかと思います。
話は変わりますが皆さんは
「人はみな泣きながら生まれてくる」
という言葉をご存知でしょうか?
これはシェイクスピアの「リヤ王」に出てくる有名な台詞です。
作家五木寛之はこの言葉の中に、
「人は自分の生まれ方を決められない」
「人の一生は日々死へ向かう旅である」
「人生には期限があり必ず死をむかえる」
という三つの真理があると言います。
そしてある番組で生きることの意味を問われたとき、この言葉を引用して、
「人は生き延びることが大変な仕事で、生き続けるということが大切なんだ」と語っていました。
みな泣きながら生まれ、みな死にます。
でもその間の人生を何とか楽しいものにしないと、
寿命が延びるというのが、
単に苦しみの期間が延長されるだけの虚しいものになります。
生きることが大変になってきている今日この頃ですが、
神様から余分にもらった寿命を
豊かに生き続けられるよう努力したいものですね。
「日本人の平均寿命」
紀元前11~1世紀 (縄文時代) 14.6紀元前3世紀~3世紀 (弥生時代) 縄文時代と変わらず
3~7世紀 (古墳時代) 縄文時代と変わらず
14~16世紀 (室町時代) 15.2
17世紀 (江戸時代) 20歳代後半~30歳
18世紀 (江戸時代) 30歳代半ば
19世紀 (江戸時代) 30歳代後半
1880年 (明治13年) 男 36 女 38
1921~24年 (大正10~14年) 42.06 43.2
1947年 (昭和22年) 50.06 53.96
1950年 (昭和25年) 58.0 61.5
1951年 (昭和26年) 60.8 64.9
1952年 (昭和27年) 61.9 65.5
1959年 (昭和34年) 65.21 69.88
1960年 (昭和35年) 65.32 70.19
1971年 (昭和46年) 70.17 75.5
1984年 (昭和59年) 74.54 80.18
1986年 (昭和61年) 75.23 80.93
2004年 (平成16年) 78.64 85.59
2008年 (平成20年) 79.29 86.05